LOGIN爆発が起こった。
衝撃で部屋が揺れる。
「なるほど……健太郎さんにしては、なかなか格好いい最後だったようですね、ふはははははははっ!」
「くっ……健っ……!」
素早くマガジンチェンジを行い、藤原が雄介目掛けて発砲する。
その藤原の体を、雄介の鋭い視線が容赦なく切り刻んでいく。
* * *
その時、爆発音に妖しい眠りから覚めた涼子の視界に、雄介と戦う藤原の姿が映った。
「……お……お兄ちゃん……」
涼子が体に巻かれたコードを外そうとあがく。
幸いにもコードは緩く締められていて、何度か試みている内に外す事が出来た。
―涼子の目に、床に転がる鉈が映った。
涼子が鉈を手に取り、ゆっくりと立ち上がった。
「ふはははははははっ! 藤原君、そろそろお別れの時ですね! 僕を裏切った事、あの世で後悔してください!」
涼子が鉈を振りかざし、雄介の後ろに立った。
藤原は壁にもたれかかり、諦めきった表情で両腕をだらんと下ろした。
「よりによって、屁たれのクソダコに殺られるとはな……」
「死ねっ!」
その時だった。
「やああああああああっ!」
涼子が雄介の首目掛けて、渾身の力を込めて鉈を一気に振り下ろした。
* * *
「お兄ちゃん……」
その声に藤原が安眠マスクを取ると、そこには血まみれになった鉈を手にした涼子が立っていた。
「涼子……雄介は……」
涼子が力なく、人差し指を雄介の首に向けた。
「……」
雄介の髪は元に戻っていた。
「やっと呪いから解放された、と言う訳か……」
涼子が鉈を放り投げた。
藤原が立ち上がり雄介に近付くと、傍らに真紅のしずくが転がっていた。
するとそのしずくが、藤原に語りかけてきた。
―欲しい物をやろう―
ボンッ!
藤原がトリガーをひき、しずくが粉々に砕け散った。
「あんまり……人間をなめんなよ」
その時しずくの中から、真っ赤な妖気の様なものが立ち込めた。
「なっ……」
その妖気が、藤原に語りかける。
―人間の世界に欲望がある限り、私は滅びない……必ず私は戻ってくる……必ずだ―
やがて妖気は、静かに風化していった。
「欲望か……確かにそうかも知らんな」
藤原がつぶやいた。
「お兄ちゃん、健ちゃんは」
涼子の問いに、藤原は無言で首を振った。
「健……ちゃん……」
その場に崩れた涼子が、手を口に嗚咽した。
「泣くな涼子。悪夢は……悪夢は終わったんや……」
窓の外に目をやると、白い靄で覆われていた空から、太陽の光が差し込んでいた。
ガチャッ!
突然、玄関のドアが開いた。
「なっ……!」
そこには、血まみれになった直美が立っていた。
ゆらりゆらりと近付きながら、直美が床に転がるグロックを手に、藤原に向けた。
ボンボンボンッ!
直美と藤原が同時に撃った。
直美の弾はそれ、藤原の左肩をかすめた。
藤原の弾は直美の額に命中、直美がその場に崩れ落ちた。
「……屁たれが……」
藤原がガバメントを投げ捨て、そうつぶやいた。
涼子が母に巻きついているコードを外し体を揺らすと、母も意識を取り戻した。
「……」
藤原が窓から街を見下ろす。
「お兄ちゃん、終わったんやね……」
「ああ……失ったんはでかいけどな……健……本田……坂口さん……直美ちゃん……」
「私は大丈夫よ、お兄ちゃん……」
そう言って涼子が、藤原に寄り添うようにもたれかかってきた。
「また……いい彼氏見つけるから……」
そう言って小さく笑う涼子の瞳に、涙が光った。
そんな涼子の肩をそっと抱き、藤原がようやく笑った。
「やっと……終わったんやな……」
半年後。戦いは終わった。数百万の犠牲を払った大阪に、少しずつ活気が戻りつつあった。事件の真相は当然、誰にも分からない。全てを理解しているのは、藤原と涼子だけ。そして二人が、それを口外する事はなかった。* * *徘徊していた数百万にも及ぶ石像たちは皆、元の姿に戻っていた。しかし坂口の言っていた、「首謀者を倒せば、呪いが解けて皆が助かる」と言う言葉は、残酷な答えとなって返っていた。確かに元の姿に戻りはしたが、脳味噌を排出した人々が再び蘇生する事はない。市内は数百万人の死体の山、ゴーストタウンと化していた。学者たちは頭を悩ませ、連日この惨劇を巡っての議論が続いた。だが誰一人として、答えにたどり着くものはいなかった。藤原は思っていた。(呪いからは解き放たれた……魂っちゅうもんがあるんやったら、みんな、安らかな眠りについた筈や……そうや、絶対そうや……)* * *雲ひとつない透き通る青空を、ベンチに座って見つめている藤原と涼子。藤原が涼子の頭を優しく撫でた。「お兄ちゃん、屁たれにだけはなりたくないね」涼
爆発が起こった。衝撃で部屋が揺れる。「なるほど……健太郎さんにしては、なかなか格好いい最後だったようですね、ふはははははははっ!」「くっ……健っ……!」素早くマガジンチェンジを行い、藤原が雄介目掛けて発砲する。その藤原の体を、雄介の鋭い視線が容赦なく切り刻んでいく。* * *その時、爆発音に妖しい眠りから覚めた涼子の視界に、雄介と戦う藤原の姿が映った。「……お……お兄ちゃん……」涼子が体に巻かれたコードを外そうとあがく。幸いにもコードは緩く締められていて、何度か試みている内に外す事が出来た。―涼子の目に、床に転がる鉈が映った。涼子が鉈を手に取り、ゆっくりと立ち上がった。「ふはははははははっ! 藤原君、そろそろお別れの時ですね! 僕を裏切った事、あの世で後悔してください!」涼子が鉈を振りかざし、雄介の後ろに立った。藤原は壁にもたれかかり、諦めきった表情で両腕をだらんと下ろした。「よりによって、屁たれのクソダコに殺られるとはな……」「死ねっ!」その時だった。「やああああああああっ!」
雄介が拳を握り締め、わなわなと肩を震わせた。レースでよく見えないが、泣いている様に見えた。そしてしばらくすると天を仰ぎ、藤原への思いを断ち切る様に笑い出した。「あっはっはっはっ!」虚しい笑い声が、室内に響く。「分かりました……僕には……僕には友達なんかいなかったと言う事ですね……じゃあ僕は何ら遠慮する事なく、この力を持って世界の頂点に登ります……やはり頂点は一人なんですね……まずは健太郎さん、あなたです……あなたには最高の舞台を用意しましょう……直美さんっ!」「何……直美ちゃん、やと……」雄介の声にバスルームの扉が開き、中から直美がゆらりと姿を現した。「直美ちゃん……無事やったんかえっ!」「待て健」身を乗り出して叫ぶ健太郎を、藤原が制した。「よお見てみい、目が死んどる」「な、直美ちゃん……」「彼女はもう、僕の忠実な下僕です。彼女の能力は素晴らしい物です。石像にしてしまうには余りにも惜しい、そう思いましてね。彼女にはその姿のまま、僕の番犬になってもらったんです。さあ直美さん! まずは健太郎さんを殺して下さい!」その声に、直美の肩がピクリと動いた。&nbs
10分後。「ええ加減にさらさんかえこのボケッ!」健太郎が藤原の後頭部を張り倒した。「ごっ……!」衝撃で目から火を出した藤原が、思わずうなる。そして静かに、大きく深呼吸すると手を挙げ、二人に言った。「すまん、ちょっとタイムや……」ポケットから煙草を取り出し、くわえて火をつける。「ふううううぅっ……」白い息を吐き、眉間に皺を寄せ、天を仰ぐ。「……よし、もう大丈夫や……いわちゃき、いや、岩崎雄介やな、分かった……」煙草を床に捨て、踏み消した。「……そやけど、岩崎雄介……そんなやつ、俺知らんぞ。訳の分からん事ぬかしやがって……それも人の事、馴れ馴れしぃ呼びくさって」「正気に戻ったかえ。そやけどちょっと待てや、その話は後や。おえ屁たれ! 先に俺が質問するっ! お前がどないして、そんな訳の分からん能力を得たんか、まずはそっからや! さあ、答えたらんかえっ!」健太郎が雄介にショットガンを向けて吠えた。健太郎の問いに、思考が停止していた雄介もようやく我に帰った。「……い、いいでしょう&
銃を構えた藤原が、部屋に足を踏み入れたその時だった。「藤原、目えつむれっ! やっぱしやつはゴーゴンの力を持っとった! 顔見たら石にされてまうぞっ!」健太郎が大声で叫んだ。「……分かった」藤原が静かにうなずき目をつむり、安眠マスクをしようとした。その時だった。「藤原君! 心配しなくていいよ! 君に危害を加える様な事は絶対にしない! する訳ないじゃない! さあ、目を開けて!」雄介の狂喜する声が響いた。「何を! 騙されるかえっ!」「……大丈夫、僕は顔にレースをかけます。そうすれば石になる事はありません。健太郎さんも大丈夫ですよ、マスクを取ってください」藤原が恐る恐る、ゆっくりと目を開けた。すると雄介の言う通り、彼は顔に黒いレースをかけていた。頭にはシュルシュルと蛇が動いているのが見える。「おい健、大丈夫や。お前も目ぇ開けろ」藤原の声に、健太郎も安眠マスクをゆっくり外した。「……」藤原には、所狭しと張られている自分の写真、散乱しているコードや倒れている涼子の姿は見えなかった。彼の目に映ったもの。それはその場に転がっている、坂口の無残な生首だった。「坂口さんも……やられたんか……」「お
13階でドアが開いた。ショットガンを突き出しながら、健太郎が素早く左右に目を這わせた。坂口は十字架を天高く掲げ、健太郎に続く。その時、またあの声が聞こえてきた。「心配ありませんよ……ここに石像はいません……いるのは僕だけです……」「くっ……こんガキ、とことん挑発してけつかる……まあええ、行ったろやないかえっ!」健太郎が吠え、大股で藤原の部屋に向かった。声の主の言う通り、石像に遭遇する事無く、二人は藤原の部屋の前に立った。健太郎と坂口が顔を見合わせ、互いにうなずく。その時、玄関のドアが静かに開いた。「坂口さん、行きまっせ!」「分かった!」二人が同時に足を踏み入れる。「な……」健太郎が我が目を疑う。そこは既に、健太郎が知る藤原の家ではなくなっていた。バスルーム以外の壁が全てなくなっており、3LDKの部屋が大きな一室になっていた。そして至る所に、藤原の写真が所狭しと貼られていた。「な……なんじゃこの部屋は……藤原、藤原だらけやないか……あいつ、こないナルシストやったんかいな&hellip